密度汎関数理論 (Density Functinal Theory)



 相互作用する多電子系の基底状態(1番エネルギーの低い状態)の エネルギーは電子の密度分布により決められると考える。実際に 実現する電子密度分布はそのエネルギーを最小にするという 変分原理により与えられる。これをもとに多電子系の 電子状態を計算するための具体的な方法として、 電子間相互作用の効果を有効ポテンシャルの形で考慮した (1電子の波動関数に対する)シュレディンガー方程式 (通常は Kohn-Sham 方程式と呼ばれる)が得られる。 実際の計算は(1)電子密度分布を適当に仮定して有効ポテンシャルを 計算し、(2)それを用いて Kohn-Sham 方程式を解く。 ここで得られた1電子の波動関数から計算された 電子密度が最初に仮定したものと等しくなるまで上の計算を繰り返す。 この方法は物質の電子状態を定量的に計算する道を拓いたもの であり、多くの研究によりその有効性が示されている。 W.Kohn は密度汎関数理論の業績により1998 年度の ノーベル化学賞を受賞している。密度汎関数法は第一原理 計算による物性研究の基本として利用されるばかりでなく、 その拡張に関する研究も進められている。特に励起状態や 動的応答(時間的に変化する外場(電場など)に対する応答)の 問題や強相関電子系の取り扱いなどがホットな話題となっている。


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